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東京高等裁判所 昭和28年(う)1199号 判決 1953年9月28日

控訴人 被告人 池田銘一

弁護人 坂晋

検察官 曾我部正実

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は弁護人坂晋並びに被告人各作成名義の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、ここにこれを引用し当裁判所はこれに対し次のように判断する。

論旨第二点について。

しかし、原判決の認定判示するところによると、原判示第六の事実は原判示自転車を月賦売買名下に原判示の如く騙取したというのであり、原判示第七の事実は右自転車の月賦代金債務の弁済を免れると同時に、釣銭名下に更に金員を騙取する目的の下に原判示の如き約束手形を偽造し、これを原判示被害者に交付行使して原判示の如く釣銭名下に金四千四百円を騙取すると同時に、原判示月賦代金相当額の債務を免かれて財産上不法の利益を得たというのであるから、両者は全く行為の性質及びその被害法益を異にするので、所論のように両者が謂わゆる吸収関係乃至択一関係にあるものと解すべきではなく、両者は各独立して別個の犯罪を構成するものといわなければならない。従つてこれと見解を同じくする原判決には所論の如き法令の適用を誤つた違法はない。論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 坂間孝司 判事 鈴木勇 判事 堀義次)

控訴趣意

第二点原審判決は判決に影響を及ぼすべき法令の適用の誤りを犯すもので破棄せらるべきものと信ずる。原判決に従えば、その第六に、被告人が代金支払の意思なくして横山藤一より自転車一台を騙取した事実を認定、同第七に、右自転車を含む自転車の月賦代金三ケ月分の債務(第六表示の自転車を含むこと被告人の第三回供述調書、横山藤一の供述調書より明かである。)を免れる為、偽造有価証券を行使し以て詐欺を為した事実を認めている。仮に判示第六の行為を詐欺の既遂と認めるならば、観念的に第七表示詐欺の行為は成立せざるか或は一罪と見られるものであり逆の場合に於ては第六の行為は正当なる債務負担の行為か或は第七の行為に吸収せられるべき関係にあるもので、所謂吸収関係又は択一関係であつて決して二罪を構成すべきものではない。然るに原審判決は第六の行為につき刑法第二四六条第一項第二の行為につき有価証券偽造同行使の外刑法第二四六条第二項を適用し両者を併合罪として加重を為しているもので、全く法令の適用を誤り、且つ右誤が判決に影響を及ぼすべき事明白であつて破棄を免れないものである。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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